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日本の火葬の歴史

Updated: Mar 13

火葬の定義


現代の葬儀場

火葬は、火葬炉で遺体を強烈な熱で焼却し遺骨/灰に変えることにより、遺体を処分するプロセスです。このプロセスは火葬場/火葬室内の火葬炉で一連の流れが行われます。一部の火葬場は葬儀社が運営管理するものもあり、また葬儀場、または火葬室が併設され、ご遺族・ご友人が火葬の直前に葬儀をすることができます。東京の火葬場のほとんどは葬儀社が運営する民間のものですが、一部は自治体が管理する公営のものもあります。


初期の火葬場/火葬室の焼却炉の設備


世界の埋葬方法には、土葬、火葬、水葬、鳥葬、風葬や最近では宇宙葬などもありますが、現代の日本においては火葬がほぼ唯一の埋葬方法となっています。「葬儀」と言うと、葬儀社が行う葬儀の後に、火葬室へと向

かい、ご遺体を火葬炉に納める流れを思い出す方が多いと思われます。しかし、歴史を見ると、かつて日本では火葬はあまり行われておらず、長い間土葬が一般的でした。


飛鳥時代

各地に残る古墳から推測できるように、飛鳥時代には土葬が行われており、それが埋葬方法としても一般的でした。しかしながら、646年に制定された「薄葬令」により古墳の建設にかける期間や関わる人員の数が制限されたため、これ以降豪華な古墳を競い合うように建てることはできなくなりました。また庶民に対しても、それまでのように複数の場所に散埋するのではなく、一定の場所に埋葬するよう規定がされました。この埋葬場所に関する制限が、現代の墓地のルーツになっているとされています。 そして、火葬が日本史上で初めて行われたのもこの時代です。記録によると、道昭という名前の僧侶が700年に火葬されており、また、702年には持統天皇も火葬式による葬儀からの埋葬への流れが行われています。一方、庶民の間では飛鳥時代には火葬式の流れが広まらず、特権階級のみが行える埋葬方法であったと言えます。

奈良・平安時代

奈良時代に入ると、首都平城京の内部にお墓を建てることが禁止されるようになりました。この方針は平安時代になっても続き、天皇や貴族といった特権階級であっても例外なく京の外に埋葬されていました。 一方、庶民に関しては、平安時代から引き続き一定の場所に埋葬するルールが続いていました。「梧庵漫記」にある記録によると、京の周辺の山野・河原が、庶民の葬られる場であったようです。 平安時代に入ると、高野山に火葬式による葬儀の後に遺骨/灰や遺髪を納める流れの、「高野納骨」が盛んに行われました。1085年に崩御した性信法親王は遺骨/灰を、1108年の堀河天皇は遺髪を高野山に納めました。当時盛んに信じられていた仏教の教えにおいて、この時代は悟りを開くものがいない時期を意味する「末法」だと言われていました。天皇・貴族など特権階級の人々は、火葬式による葬儀の流れの後、弥勒の浄土である高野山に納骨されることを希望していたようです。

鎌倉・室町時代

鎌倉時代に入ると、浄土宗や浄土真宗といった鎌倉仏教が特権階級・庶民の間に隔てなく一般的に普及しました。その教えから、葬儀・埋葬方法に火葬式による埋葬の流れも広く浸透するようになりました。しかし、葬儀・埋葬方法に関して火葬式の流れが広まったとはいえ、火葬場・火葬炉の設備も十分に整っていたという訳ではなく、火葬に必要な技術自体も十分に発展していなかったため、遺体を完全に焼却することは困難でした。このため、鎌倉・室町時代以降も埋葬方法に関しては土葬と火葬の両方が長い間用いられることになります。

また、鎌倉仏教の普及に伴い、仏教の死生観も一般的に認知されることとなりました。こういったことから、本格的な葬儀の流れが一般的に行われるようにもなりました。 応仁の乱以降の様々な記録から、寺院の境内に墓地が設けられていたことがわかります。室町時代に入っても、首都内にある寺院の境内での埋葬は禁止されていましたが、阿弥陀寺や知恩寺では例外として京中寺院であっても境内への土葬が許可されました。これは、京の都の住人たちの「お寺の本堂の本堂の近くに眠り、追善供養を受けたい」という希望が叶ったためで、現在の寺院墓地のルーツとされています。

江戸時代

江戸時代の埋葬方法は、火葬、土葬の両方が行われていたことが記録からわかります。しかし、江戸では火葬式の流れよりも土葬による葬儀・埋葬が主に親しまれていました。その理由の一つに、「親の遺体を火葬場で焼く行為は親不孝だ」といった儒教的な考えがあったためとする説もあります。また、当時江戸には人口が密集しつつあったたため、火葬式の流れの中で火葬場での設備から出る煙と臭いに多くの人が苦情を寄せていたとされます。こうした理由から、火葬場での火葬よりも土葬が主流だったようです。また江戸幕府は、キリスト教に対する態度を硬化させ、その布教を止めるために禁教令を出しました。その一環として檀家制度を発令し、国民を強制的にどこかのお寺に所属させました。これにより、葬儀の流れやお墓は全てお寺で管理されるようになり、日本における一般的な葬儀の流れが仏教の教えにに則ったものになりました。

明治・大正時代

明治時代になると、全ての寺院墓地が国有地となり、その2年後の明治5年には自葬が禁止が布告されました。これにより、葬儀の流れを行うためには、神職・僧侶に依頼することが必須となりました。 また、明治初期は廃仏毀釈と神道の推奨から、仏教の流れを含む火葬が禁止されるようになります。しかし、火葬の再開を望む声が多かったことに加え、土葬用の土地もなくなってきていたことから、この火葬禁止令は2年で撤回されました。その後、火葬の衛生面での有用性が認められ、火葬が義務化されるようになりました。 また、当時の日本の近代化・欧米化により、喪服についても従来の白いものから欧米風の黒いものへと変化していきました。 大正時代に入ると、それまでの人力車に変わって霊柩車が庶民の間でも使用されるようになりました。これらのことから、現代の葬儀・火葬式の流れは大正時代の頃に形成されたものと言えるでしょう。 以上ように、火葬は1300年の時代を越え、次第に特権階級の間から庶民の間に広がって行きました。その普及の背景には、仏教の教えの浸透や、火葬そのものの有用性についての認知などがあります。また、火葬式の文化もそれらに伴い何百年の時間をかけて徐々に現代の日本における様式や流れを形成していったことがわかります。



火葬室での火葬のプロセス

火葬場での火葬の流れ

日本の火葬場の火葬室に併設される焼却炉は、大きく分けて「ロストル式(オランダ)」と「台車式」の2種類に分けられます。





・ロストル式の火葬場/火葬室での火葬の流れ

ロストル式の火葬場の火葬室にある設備と火葬方法


ロストルはオランダ語の「roster(火格子)」を指します。ロストル式の火葬室での火葬の流れは、金属棒を炉内格子状に渡したものに棺を乗せて火葬炉へと送るため、その名前がつきました。現在ロストル式を採用している火葬場は全体の3%程度と言われています。ロストル式の火葬炉には、ロストル部分から落ちたご遺骨/灰を受けるための受け皿があります。そのため上部が燃え尽きても、皿の部分が高熱になっているため、燃料効率よく火葬を行うことが可能です。このため、1日により多くの火葬を行うことができる利点があり、東京の大規模な火葬場ではロストル式が採用されています。


かかる費用と時間


ロストル方式による葬儀場の火葬炉での火葬にかかる費用は、公営か民営葬儀社かによって変化します。公営の火葬場での火葬の場合は、数千円~5万円程度で、民営の葬儀社での場合は4万9千円〜15万円程度が相場となっています。葬儀社が提供する台車式と比較しても金額差はありません。

葬儀社が手配するロストル式では下部から空気を送り続けることができるため燃焼効率が高く、火葬時間は平均60分程度となっています。最新の技術が採用された焼却炉であれば35分程度で完全に火葬を終えることができます。


台車式の火葬場/火葬室での火葬の流れ

台車式の火葬場の火葬室にある設備と火葬方法


火葬にかかる費用はロストル式と比較して変わりません。自治体が管理する公営のものか、葬儀社による民営の葬儀場での火葬式かによって費用が変わります。


葬儀社が手配する台車式は隙間のない構造になっているので、酸素が少なく燃焼効率が低いため、火葬に平均60分から70分かかります。


現代の火葬炉は都市ガスまたは液化石油ガスを燃料としています。主炉バーナーが点火され、火葬炉内の温度は華氏800〜1200度まで上昇します。火葬プロセス全体には30分〜70分かかります。これは、ご遺体の大きさ、火葬炉の技術、火葬炉の種類によって異なります。


日本の火葬場

火葬場の設備


民営の葬儀社・公営の施設共に、火葬場には通常故人と最後のお別れをしっかりと行う設備が備わっており、ご遺族を急かすことのないような配慮がされています。



  • 霊安室(安置室) 民営の葬儀社、または公営の施設の霊安室では、法律により火葬を行うのは故人がお亡くなりになってから24時間が経過した後となります。そのため、葬儀場の霊安室もしくはご自宅にてご遺体を安置することになります。この安置の時間は、葬儀または火葬の流れの開始時までの間となっています。


  • 炉前ホール(炉前室) 民営の葬儀社、または公営の施設の炉前ホールは、火葬炉へ納棺したり、ご遺骨/灰を引き出したりする火葬炉の扉の前に設けられた部屋のことです。火葬が始まる前に、故人と一番最後のお別れをする場所です。


  • 待合室 民営の葬儀社、または公営の施設の待合室は、ご遺体が火葬炉に運ばれて、火葬が終わるまでの間ご遺族と参列者の方が過ごす部屋のことを指します。火葬が終わり、収骨が始まるまで早くても1時間はかかります。待合室には軽食や飲み物が用意されている場合が大半です。

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大気汚染を減らし、エネルギーを節約する技術


火葬技術は進歩を続け、より効率的な火葬炉と自動火葬を可能にしました。最新のハイテク火葬場は、完全に自動化され、信頼性が高く、静かなものです。

さらに近年、米国では、炭素排出と温室効果ガスの最小化を目的とした環境に優しい技術革新が火葬場の間で始まっています。バイオ火葬やレゾネーションとしても知られるアルカリ加水分解の導入により、二酸化炭素の排出量が大幅に削減されました。この新しい火葬場でのプロセスは、水と灰汁の混合物に遺体を浸し、沸騰を防ぐために高圧で華氏320度(摂氏160度)の温度まで加熱します。これにより、効果的に遺体を化学成分に分解します。この新しい火葬のプロセス全体には約3時間かかります。


衛生面と清潔さ


悪臭と感染症リスクの両方を回避するために、火葬炉の衛生面と清潔さの高い基準を維持することが不可欠です。それにより、葬儀社や自治体の火葬場管理者は火葬場作業員のための健全な職場環境を確保し、顧客や火葬場訪問者に適した環境にすることができます。火葬室や火葬炉だけでなく、火葬場全体の清潔さと衛生管理を促進することは、地域環境保護にも貢献します。


火葬場・葬儀社で働くために必要なスキル


葬儀社・火葬場でのサービスにまつわる仕事は多種多様ですが、その中でも代表的なものには以下の3職種があります。


  • セレモニースタッフ 一般的に知られる、火葬場・葬儀社でのサービスの仕事を担当します。遺族に寄り添いながら、葬儀を滞りなく進行していく火葬場・葬儀社のセレモニースタッフは、葬儀から火葬までの流れの中でご遺族・参列者にもっとも近い存在です。

  • 霊柩車運転手 火葬場・葬儀社の霊柩車運転手は、葬儀の後に故人の納められた棺をご自宅や斎場から火葬場へと運ぶ仕事です。火葬場・葬儀社の霊柩車運転手の職務内容は、運転だけではなく、棺の固定や車の清掃などのメンテナンスを行い、霊柩車を常に清潔なものに保っています。

  • 事務員 火葬場・葬儀社の事務員は、一般企業の事務職のようなものです。火葬場・葬儀社の事務員は、以下のような業務を担当しています。

    •  電話応対

    •  受付

    •  伝票の記入

    •  遺族からの火葬許可証の受け取りなど


火葬場・葬儀社の事務員の仕事は、火葬場・葬儀社によってはセレモニースタッフが兼務する場合もあります。


火葬場・葬儀社で働くには、高いマネジメントスキルと対人能力が必要です。そのため、人生経験豊富なミドルシニアが火葬場・葬儀社では広く歓迎されています。 火葬場・葬儀社で働くための資格やスキルについては、高卒以上の学歴や運転免許などが一般的に職務に必須とされています。しかし、葬儀場・葬儀社の社員は葬儀場でのあらゆる状況に適宜対応できるよう、入社後しっかりとした専門的な実地訓練も受けています。 また、以下のような資格についても、葬儀社・葬儀場の職員がしばし保有しています。

  • 秘書検定:ビジネスマナーや一般常識が身についているということの証明。

  • 葬祭ディレクター技能審査:厚生労働省認定の資格で、葬儀社や火葬場で働くために必要な技能・知識を審査・認定する。

日本の火葬場

日本での火葬の広まり

日本では6世紀に皇族・貴族・僧侶の間で火葬が始まり、鎌倉時代からは庶民にも浸透し始めました。他国と比べ長い火葬の歴史を持つ日本では、現在の火葬率はほぼ100%で、世界一の火葬大国となっています。(例:韓国49%、アメリカ40%。)

全国には1,400以上の火葬場があります。火葬が伝統的手段であることも起因して、日本ではご遺骨/灰でダイヤモンドを作成するという新しい供養方法に近年大きな関心が寄せられています。また、愛する方の火葬後のご遺骨/灰や、家族の一員であるペットの火葬灰を散骨する代わりの方法としても注目を集めています。ご遺骨/灰から遺骨/灰ダイヤモンドを生み出すことは、大切な故人の方との思い出を一生手元に残すことを可能にします。 ご遺骨/灰をダイヤモンドに変えることは、熟練のスキルと高度な技術環境が必要です。火葬後のご遺骨/灰からダイヤモンドを作ることは、大切な故人の方を永久に想い続ける新しい方法です。


故人のご遺骨/灰から作製するダイヤモンド

公営火葬場と民営火葬場


火葬場には公営のものと民営のものがあります。公営火葬場の特徴としては、故人やご遺族がその自治体の住民であれば式場使用料が民営のものと比べて安価(自治体によっては無料)になること、宗教・宗派に関わらず利用できることなどがあります。


一方、民営の火葬場は公営のものと比べて料金は高くなる傾向がありますが、その地区の住民であるか否かに関係なく料金が一定であること、サービスのプランによっては故人の方・ご遺族の希望に沿った火葬式の流れを経ることができます。


東京の火葬場の数は地方より多い?


全国で1,400以上の火葬場がありますが、そのうち東京にあるものは26のみとなっています。首都東京に全国の人口のおよそ11%(2018年10月時点)が集中していることを考えると、東京の火葬場数は決して多いとは言えません。


その他の葬儀・供養の種類


急速に進む少子高齢化に伴い、葬儀やお墓に対する考え方も大きく変わりつつあります。 葬儀やお墓にお金を使いたくない方や子や孫に負担をかけたくない人が増えてきており、従来のものに代わる新しい葬儀・供養の必要性が高まっています。そんな中、ご遺骨/灰を自然へと還す方法を選ぶ方も増えてきています。


自然葬のひとつである樹木葬

樹木葬


樹木葬は、自然の中で木や草花に囲まれて埋葬される方法で、墓石を必要としません。宗教に関わらずシンボルとなる樹木の周りに埋葬してもらうことができ、跡継ぎがいなくても永代供養してもらうことができます。




海洋散骨

海洋散骨は亡くなった命を自然に戻す、自然葬の一つです。火葬場で粉骨し、パウダー状にした遺骨/灰を、誰の私有地でもない海の沖合で通常は散骨します。業者によっては散骨証明書を発行することもあります。





世界一美しい葬儀であるダイヤモンド葬儀

火葬された遺骨/灰をダイヤモンドに変えるサービスも、故人をいつまでも偲ぶ手元供養の方法として注目されています。遺骨/灰ダイヤモンドは、無色のものや様々なバリエーションのあるカラーダイヤモンドまで作ることができ、それを遺骨/灰指輪、遺骨/灰ペンダント、遺骨/灰ネックレスなどに加工することが可能です。故人の方との大切な思い出を象徴するようなデザインをお選びいただけます。大切な方の死から遺骨/灰ダイヤモンドの完成まで、長い時間がかかります。通常は葬儀・火葬の後、数ヶ月後の法事の場にて故人の方の生まれ変わりとも言える遺骨/灰ダイヤモンドを参列者の方に見ていただくことができます。


ダイヤモンドを遺骨/灰から作ること、海に散骨すること、墓地に埋めること、棚で手元供養することーこれらすべてが亡くなった大切な方を思いやる方法として受け入れられています。火葬で大切な方へ別れを告げたのちに残る遺骨/灰の扱い方に、多様性が生まれつつあります。


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