死別。それは大切な人が亡くなり、お別れすることです。死別は遺族に大きな喪失を与え、何日も、何ヶ月も、ときには何年もの間、人を悲嘆に暮れさせるかもしれません。そのため、喪失は人の中に根深く残ることも多々あります。しかし、遺族は生きていかなければならず、喪失感や悲嘆を乗り越え、日常に戻らないといけません。
そうした悲嘆に暮れている人をサポートするグリーフケアがあります。グリーフとは深い悲しみのことです。それでは、どのようなグリーフケアがあるのでしょうか。
愛する人との死別に喪失を感じない人などいないでしょう。日常には、故人の存在が各所にあり、さまざまな場面で故人が蘇ってきます。そのたびにグリーフに襲われることもしばしば。グリーフは死別の状況や個人によって、それぞれ度合いが違います。そのため、支援する人は、死別による喪失を受けている人がどのように回復していくか、どのようにグリーフケア をするのかを理解することが大切です。
ここでは、グリーフが回復するまでの過程を見ていきます。グリーフが回復していく様子を知ることで、自身のグリーフ、身近な人のグリーフをサポートするのに役立ちます。
事故などによる突然の死別、病気などでじわじわと歩み寄る死別。どちらにしても、愛する人を失ったショックや喪失感がその人を襲います。そのため死別後すぐは、その状況を受け止めきれずにパニック状態になる人も多数います。たとえ、気丈に振る舞ったとしても、何度もため息をついたり、すぐに涙が溢れてきたりするといった状態でしょう。
また、あのとき、こうしていればよかったなどの後悔も出てくるかもしれません。理不尽な死別の場合は、敵意さえ込み上げてくるかもしれず、さらに死別を受け止めることができない場合は、故人がまだいるように振る舞うこともあるでしょう。
死別という大きな喪失感を一気に受けるこの時期は、思考がぼんやりし、物事に対する判断に乏しい精神状態です。そのため、愛する人との死別を穏やかに受け止め理解することは、とても難しい時期です。
故人が日常にいないことを現実のものとして受け入れだします。すると、故人に注意が向きはじめ、「あの人にこうしてあげればよかった」など、自分自身を責め出す傾向があります。それにより、塞ぎ込みがちになったり、眠れなくなったり、食事が喉を通らなかったりすることがあります。
故人のことを思うあまり、ご自身の不甲斐なさを痛切に感じることも。グリーフによって心身が落ち込みやすい時期ですので、必要であればカウンセラーや親しい友人などからサポートをもらう方が安全なこともあります。
グリーフが緩和し、周囲の状況に注意を払えるようになります。また、人と以前のように交流できるようになったり、新しいことにチャレンジする気持ちが芽生えてきたりします。
つまり、今後の人生に目を向けることができるようになるのが回復期です。いつの日か、おとずれるため、死別によるグリーフを無理に回復しようとせず、焦らずにその人のペースで回復期を迎えるといいでしょう。サポートする場合も、急かしたりしてはいけません。自然治癒のような気持ちで、回復期を迎えられる支援が必要となります。
身近な人が悲しみに暮れているのをサポートしたり、何らかの形で支援したりしたいと考える人はたくさんいるでしょう。しかし、死別によるグリーフの中にいる人に、どんな言葉をかけていいのか、どんな支援がいいのかわからないことも多いと思います。グリーフがただ回復するのを待つという支援方法しかないと感じることもあるのではないでしょうか。
グリーフケアを知っておくことで、喪失による悲嘆で沈んでいる人をサポートできます。
悲嘆の程度は人それぞれです。支援する側は、その人に寄り添い、話を聞いてあげるサポートが必要でしょう。グリーフの渦中にいる人は何度も同じことを言葉にするかもしれません。また、ネガティブな感情ばかりを話すかもしれません。支援側の心中を辛くさせることもあるでしょう。
しかし、回復するまではそうしたことが起きることを理解し、グリーフの人の言葉を深く考えないようにしましょう。悲しみの言葉を聞き続けることは容易なことではないかもしれませんが、できる限り、話をさせてあげてください。
悲嘆にいる人が辛すぎて話せない場合は、絵を描かせたり、文章を書かせたりしてもいいでしょう。絵や言葉にして吐き出すことも、悲しみを和らげる効果があります。
悲嘆にいる人が、ときには怒りを示すこともあります。理不尽な状況で死別を経験した人は、他人を責めることもあるでしょう。悲嘆の渦中では、さまざまな感情が湧き出ますから、支援者はそうした気持ちを受け止めてあげましょう。
ときに、喪失から逃れるために、過食に走ったり、誰かと会うことを避け閉じこもってしまったり、ゲームばかりしているといったこともあります。喪失と向き合う人は、一生懸命回復をしようとしています。理解を示すことも支援になるでしょう。
もし、支援することが難しいと感じた場合は、グリーフケアのカウンセラーにお願いすることもできます。カウンセラーはグリーフに関する専門的な知識を携え、職業としてサポートします。悲嘆している人にとって、カウンセラーは第三者的な存在になることから、もしかしたら、身近な人に話せない心情を話すことができるかもしれません。カウンセラーの支援があることを念頭に入れておくと、支援者も気が楽になるでしょう。
喪失感に囚われている人は、日常を送ることさえ困難です。朝起きること、掃除などの家事をすることもできないときがあります。火葬後の片付けや費用の計算などができずに、そのままになっていることもあるでしょう。こうした日常を手伝ってあげることもサポートになります。
というのは、「何かあったら声をかけてね」と言われても、声をかけることさえできない状況なのです。そのため、食べ物の差し入れをしたり、庭の水撒きをしたりなど、具体的な行動で支援してあげると喜ばれます。
また、費用はかかりますが、葬儀や火葬はできるだけ行うようにサポートしてあげましょう。悲嘆から回復するには、現実を受け入れていくのが近道です。そのため、葬儀や火葬で故人としっかりお別れすることも、ときには必要でしょう。遺骨をお墓に納骨することで、回復する人もいます。お墓がない場合は、費用が比較的抑えられているメモリアルダイヤモンドなどの手元供養を勧めてあげてもいいですね。
悲嘆に暮れている人は、平常心で物事を判断できないことがほとんどです。そのため、普段の何気ない言葉や励まそうと思って言った言葉でも、その人を傷つけてしまったり、怒らせてしまったりすることがあります。
支援する側も細心の配慮を払い、以下のような言葉を言わないようしましょう。
頑張って
もうちょっとだから
あと少し辛抱すれば大丈夫
早く元気になってね など
お気持ちはよくわかりますよ
時間が解決するでしょう
もう少しすれば気持ちが和らぎますよ など
まだ若いから、これから!
また、結婚すればいいじゃない
また、子どもを作ればいい
もう忘れよう など
死別によるグリーフは人の生命力を奪い、さまざまな感情や行動を経て回復していきます。ときには、その人らしからぬ言葉を言うこともあるでしょう。この時期に話される言葉は理性的ではないので、支援者はそれらに注意を取られてはいけません。そのため、死別の悲しみにいる人の精神状態や行動を理解し、サポートすることが求められます。
グリーフのサポートには、気持ちを吐き出させるために話をさせたり言葉を書かせたりします。ただ寄り添うことも大事なサポートです。また、費用はかかりますが、サポートをカウンセラーにお願いすることもできます。
そして、故人と遺族の希望する葬儀や火葬式を実施し、火葬後に納骨をすることできちんと故人とお別れをさせることも重要なサポートとなります。お墓が高額で手が出せない場合は、遺灰ダイヤモンドなどの手元供養をおすすめしてみましょう。
死別による悲嘆者は非常にセンシティブ(敏感)なため、サポートする場合は、言葉に気をつけましょう。いつもの言葉が、その人を傷つけたり、さらに深い悲しみに追いやったりすることがあります。もし、どんな言葉を発していいか分からない場合は、ただそばにいてあげることだけでも十分なサポートです。
多くの悲嘆者は、話を聞いてくれるだけ、そばにいてくれるだけでいいときも多いそうです。そのため、言葉をかけなくても、サポートしようとする気持ちと存在が、すでにサポートになっているので、安心して取り組んでください。