昨今、お墓を持たずに自宅供養のために、遺骨を自宅で長期保管する人が増えています。しかし、遺骨は埋葬することが従来の形式のため、自宅で遺骨を長期保管することが良くない、成仏できない、違法なのではないかと言った不安の声も上がっています。
特に一般の人は法律に詳しくないことも多く、四十九日を過ぎても遺骨を自宅に置いておくことは違法なのではないか、手元供養のために遺骨をアクセサリーにして身につけることは違法にならないかと心配する人も多いようです。
不安を取り除き疑問に答えるために、自宅供養に関するQ&Aを用意しました。
火葬後に自宅に遺骨を持ち帰り、安置して供養することを自宅供養と言います。手元供養も同様に自宅に遺骨を保管し供養しますが、自宅供養の場合は全骨で、手元供養は分骨(遺骨を2箇所以上に分けて供養する)です。つまり、手元供養は、遺骨の一部を自宅に保管すること。また、手元供養は遺骨を自宅でミニ骨壷に入れて保管することだけでなく、アクセサリーに納骨して身につけることも含みます。
自宅供養は、部屋に骨壷のまま安置することが多いですが、自宅供養のために骨壷ではなく遺骨を収納できる祭壇もあるので、それに納めて供養する人もいます。
ここからは、自宅供養に関する疑問や、よくある質問について紹介し、それに回答していきます。
結論から言うと、自宅に遺骨を長期保管することは可能です。ただし、自宅供養として、遺骨を自宅で長期保管し、供養する場合には注意点があります。
火葬後の遺骨は、高温で燃焼したあと、陶器製の骨壷に入れて木製の骨箱に骨壷を納めます。そのため、菌はほとんどない状態ですが、遺骨を自宅で長期保管していく中でカビが生える可能性があります。
それは、高温多湿で、カビへの何らかの栄養がある場合。たとえば、骨壺の蓋を開けたり、遺骨を素手で触ったり、植物や食べ物が骨壷の近くにあったり、自宅内で直射日光の当たる場所に骨壷を保管していたりした場合です。
そのため、自宅で遺骨を長期保管する際は、桐箱に骨壷を入れて供養しましょう。陶器製の骨壷は、蓋と本体の間に大きな隙間があり、室内の気温が高くなるとその中の空気が膨張し、冷えると外気を吸い込みます。その際に湿気も吸い込むため、湿気を吸ったり吐いたりする桐箱に骨壷を入れておくことが重要なのです。
また、自宅で遺骨を長期保管する場合は、遺骨を粉砕し、遺灰にして真空パックに入れて自宅供養するのがおすすめ。酸素がなければカビは生きていけないので、長期保管で供養するには理想的な方法です。
遺骨を持ち帰り、納骨をしないでそのまま自宅で長期保管することは、違法ではありませんが、墓地、埋葬等に関する法律で決められた場所以外に埋葬することは禁止とあり、家の庭などに埋葬することは違法です。
遺骨を自宅で保管することや長期保管などの期間、そして自宅供養や手元供養についてのルールは記載されていないため、自宅で遺骨を長期保管し、供養することは違法ではありません。したがって、日本では合法的に自宅に遺骨を安置して供養することができます。
結論から言いますと、納骨しないと成仏できないということはありません。成仏とは、煩悩が消えて悟りを開き仏陀になること。仏陀とは、悟りの境地に達した人のことです。
しかし、日本では、成仏に対する独自の死生観があり、それと仏教が統合し、成仏とは死後極楽に生まれ変わるという意味になっています。成仏できない場合は、故人の霊魂が極楽に行けずにさまよい続けるという良くない状況です。
そして、日本の仏教での考えでは、故人が亡くなったときから四十九日目で成仏します。その間は、故人の魂は成仏しておらず、現世とあの世を行ったり来たりして、どの世界に転生するかを決める裁判を定期的に受けているのです。そして、四十九日目に転生する世界が決まり、成仏します。そのため、法要をして故人の転生をお祈りします。
ですから、納骨しないことと成仏することは関係ないため、自宅供養や手元供養が良くないということはなく、長期保管の自宅供養でも成仏できます。
自宅供養をして、何年以内に納骨しないと良くないということも、納骨しなければいけないという決まりはありません。「遺骨を何年も家に置いてはいけない」とアドバイスする宗教家や石屋がいますが、実は根拠はありません。
今の日本は、火葬率がほぼ100%ですが、30年くらい前までの日本は20%くらいが土葬など火葬以外の葬儀でした。土葬の遺体を掘り起こして、遺骨を埋葬することはないでしょう。また、ある集落では三回忌後に、別の地域では一周忌後に納骨するという習慣があります。こうしたことから、遺骨を自宅で長期保管しても問題はありません。違法でもないので、安心して自宅供養ができます。
風水は、中国の古い時代から伝わる環境学のことで、環境から最も住みやすい場所を見つけるための知恵であり、良くない運気を上げて住まいを快適にすることを研究したものです。日本では、風水を使って自分の環境を整え、良くない運気を改善させることに役立てている人が多数います。
風水では、遺骨は自然の一部となるものであり、自宅供養や手元供養ではなく埋葬することを望みますが、自宅で遺骨を長期保管すること自体が風水的に良くないということはありません。風水では、遺骨の自宅保管で悲しみを連想するなら良くないこととされ、自宅供養することで感謝や温かさを連想するのであれば、遺骨を安置するのは良いことと言われています。
自宅供養で遺骨を長期保管しても、成仏できなかったり、風水的に良くなかったりすることはありませんが、遺骨を別の形に変化させた方が、成仏したような感覚になる人も多く、また、自宅で遺骨のまま長期保管していると、故人に対して良くないのではないかという気持ちを持つ人にとっては、そうした心の葛藤から抜け出せることもあるようです。
また、墓地、埋葬等に関する法律には、遺骨の加工に関する規定がないため、遺骨を加工したとしても、違法ではないというのが一般的な解釈です。
遺灰ダイヤモンドとは、故人の遺灰から抽出した炭素で生成した人工ダイヤモンドのことです。遺灰ダイヤモンドは、天然ダイヤモンドと同じ生成工程で作製するため、輝きや硬さなどの特徴も天然ダイヤモンドと全く同じです。
遺灰ダイヤモンドは故人が光り輝いているかのように輝くことから、世界で一番美しい手元供養として評されているのです。遺灰ダイヤモンドの価格は285,000円からで、遺灰ダイヤモンドの大きさや色によって価格が異なります。
麗石は、故人の遺骨でできた美しい結晶石です。石の原料と遺骨を高温で溶かして生まれ変わらせます。若葉色や瑠璃色など色をつけることができ、手元供養として安置するだけでなく、ペンダントなどにして身につけることも可能です。
価格は13万円ほどですが、業者によって異なります。見た目は石に見えるため、第三者に遺骨が混ざっていることを気づかれにくいのに、愛する故人をいつも身近で供養できる点が好評です。
クリスタルアッシュは、故人の遺骨を成分とした色ガラスの砂です。遺骨を石英などと一緒に高温で熱し、液体にしたあと、急速に冷やして製作します。さまざまな容器に入れてオブジェのように飾ったり、砂時計にしたり、身につけるためにアクセサリーにすることもできます。
ガラスの砂がキラキラと輝くときは、まるで故人が語りかけているような感覚を味わえます。容器などによって変わりますが、価格は7万円代からです。
自宅供養は、全部の遺骨を自宅で安置し供養すること。手元供養は、遺骨の一部を骨壷に入れて自宅に安置したり、アクセサリーにしたりして供養すること。
どちらも自宅で遺骨を長期保管することですが、違法ではありません。違法行為は、定められた場所以外に埋葬することです。そのため、自宅供養といっても自宅の庭に遺骨を埋葬することは違法となります。
自宅供養は成仏できないのではないかと懸念する点は、成仏は納骨とは関係ないため、自宅に遺骨を安置して供養しても成仏できます。さらに風水的に良くないということもありません。むしろ、故人を身近に感じることができて、運気が上がるなら問題ないでしょう。
自宅供養や手元供養において、遺骨の一部を遺灰ダイヤモンドや麗石のように美しい形に加工して供養するスタイルも人気です。加工方法などで価格が変わりますが、高額ではありません。新しいスタイルで遺骨を自宅で長期保管するのもいいでしょう。