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メキシコと日本の死生観の比較

Updated: Jul 10

陽気なラテンの国・メキシコ。2017年に公開された映画『リメンバー・ミー』で、「死者の日」と呼ばれるメキシコ版のお盆が一躍話題になりました。メキシコのお盆は、日本のお盆とはまったく別物で、「死者の日」は「生」と「死」を祝う日なのです。メキシコの「死」に対する考え方も、日本とは大きく異なります。

そこで今回は、メキシコと日本のお墓や死生観の違い、それぞれの特徴についてご紹介します。


メキシコと日本の死生観には大きな違いがあります。メキシコ人にとって、「死」とは「生」の延長であり、その一部であるという考え方があるため、死生観も独特です。死を受け入れ、生を存分に楽しむといった死生観は、ラテン系民族の特徴と言えるでしょう。考え方は人それぞれ違うものの、死に対してとてもポジティブな印象を持っている人が多いようです。

このような死生観は、アステカ文明に影響されていると言われています。アステカ文明では、「死」は崇高なものだという考え方があり、生贄の儀式として心臓を取り出して捧げる祭祀が行われていました。

一方、 日本の死生観は、仏教と無宗教の人が多いため、個人によって考え方にバラツキがあります。日本では死をについて語ることは少なく、タブー視する傾向にあります。死生観はメキシコに比べてネガティブです。 しかし近年では、日本でも死生観や考え方が変わりつつあります。明日が終わるかもしれないと思うからこそ、一瞬一瞬を大切に生きようと思える、そんな死生観を持つ人も増えてきました。


メキシコの風変わりなお盆「死者の日」とは?


マリーゴールドには「死者の世界から、死者を祭壇まで呼んでくれる」という言い伝えがあります。

メキシコには、一風変わった「死者の日」と呼ばれる祝日があります。毎年11月1日と2日に行われる祝祭です。死者の日はお盆にあたる日ですが、お祭りのような雰囲気があります。真逆の死生観や考え方を持つ日本人にとって、メキシコのお盆は驚きの光景でしょう。

日本のお盆は、先祖や故人が浄土から帰ってくるため、家族みんなで霊を供養する期間です。死者の日でも家族で集まりますが、日本のお盆のように形式張ったものではありません。メキシコのお盆は、みんなで楽しく故人の思い出を語り、生と死をお祝いする日なのです。 死者の日には、あらゆる場所でオフレンダと呼ばれる祭壇が作られ、故人が好きだった食べ物や写真、マリーゴールドなどが飾られます。日本のお盆のお供え物よりも色鮮やかです。

また、お盆の間は、街中には骸骨の形をしたたくさんのオブジェが設置されます。骸骨はカラフルなものから、巨大なものまで形もデザインも多種多様。なんと骸骨を模ったお菓子まで売られています。骸骨と言っても、不気味な雰囲気はまったくありません。 そして「死者の日」の目玉といえば、各地で行われる「骸骨だらけ」の盛大なパレードです。骸骨メイクや骸骨の衣装を身にまとう人たちであふれかえる死者の日のパレード。みんなで骸骨の格好をして踊ったり、楽器を演奏したりと賑やかな雰囲気。自ら骸骨になりきり、死者を明るく迎え入れるという考え方にも、メキシコのポジティブな死生観が反映されているようです。


メキシコと日本のお葬式の特徴

次に、メキシコと日本のお葬式の特徴についてご説明します。


メキシコのお葬式の特徴

メキシコでは、死生観にあるように、「死=永遠の別れ」という考え方をしません。そのため、メキシコのお葬式は明るい雰囲気で行われます。日本のお葬式のようなしきたりや決まりは少なく、服装も基本的には自由です。

お葬式の場所は、自宅や葬儀場が主流です。葬儀場にはカフェテリアがあり、お菓子やパンなどが用意されています。故人との思い出を楽しみながら語り合い、お葬式の後に二次会として飲みに行くこともあるようです。お葬式によっては、メキシコの音楽であるマリアッチが演奏されます。お葬式のスタイルにも、メキシコの明るい死生観とラテン文化が表れていますね。


日本のお葬式の特徴

日本で行われるお葬式の約9割は仏式です。故人と交流があった知人が集まり、お通夜や告別式、火葬を行う「一般葬」と呼ばれるお葬式が主流。しかし、最近では家族や親族、親しい友人など少人数で行う「家族葬」が増えています。

その他にも、お通夜や告別式を省き、費用を抑えられる「直葬」や、会社で功績を残した人や役員が亡くなった時に、会社が執り行う「社葬」など、お葬式の種類はさまざま。また、宗教色をなくした「自由葬」という新しいスタイルのお葬式もあります。


メキシコと日本のお墓の違い

ここからは、メキシコと日本のお墓や埋葬方法の特徴・違いについて触れていきます。


メキシコのお墓と埋葬方法の特徴

メキシコのメリダにある墓地。メキシコ人の90%がカトリック教徒なので、お墓もカトリック形式。

メキシコでは、家族が同じ墓に入る必要がありません。日本では、お墓は先祖代々引き継がれるものという考え方が通常ですが、メキシコでは家族とお墓を別々にするケースもあります。個人によって考え方が違うため、お墓の形式も人それぞれ。ただし、カトリック教を信仰する人が多いことから、十字架の形をしたお墓が多くあります。

メキシコの埋葬方法は、火葬をする家庭もありますが、土葬が一般的。お葬式の前に棺桶を用意し、終了後はそのままお墓に埋葬する流れです。一部のお墓では、複数の棺桶を積み上げられるように、層になっているものもあります。


日本のお墓と埋葬方法の特徴

日本のお墓は、仏教式の「和型墓石」が定番です。これは一般的によく見られる角形のお墓で、日本人にもっとも馴染み深いもの。最近では、平たい洋型墓石と呼ばれるお墓や故人に合わせて作るデザイン墓石のお墓なども増えてきました。

日本のお墓の場合、墓石にかかる費用の平均は121.83万円です。 さらにお墓を管理する費用もかかり、親族にとっては大きな負担となります。そのため、費用が比較的かからないお墓の永代供養墓を利用する人が増えてきました。永代供養墓は、霊園側がお墓を管理するため、家族に苦労をかけたくない人や継承者がいない人にも選ばれているお墓です。

また、高額な費用がかかることからお墓を持たない人も増えつつあり、自宅で供養する「手元供養」の需要も高まってきました。遺骨や遺灰をダイヤモンドなどのジュエリーに加工する「遺灰ダイヤモンド」と呼ばれる供養法も手元供養のひとつです。

土葬が主流のメキシコに対して、日本では火葬が行われることがほとんどです。明治時代以降に火葬が主流になりました。火葬が一般的な理由として、遺体を埋める土地が足りないことや、衛生面の問題が挙げられます。


まとめ

今回は、メキシコと日本のお墓事情や死生観についてお伝えしました。

メキシコの人々は、「死」に対して明るい考え方を持っています。お墓に関しても、メキシコは自由度が高く、日本はしきたりや独自のルールが多い傾向です。

しかし、日本でもメモリアルダイヤモンドなどの手元供養や自然葬が主流になってきているので、お墓や葬儀のスタイル、供養方法が、それぞれの家族が好む形へ変化していくのではないでしょうか。

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